縄文土器、土偶には数々の謎があるが、その中でも、釣手形土器或いは、香炉形土器は、特異なものであり、大きな謎
といわれる。
例の井戸尻考古館に展示されているAlian土器もこの一つ。
「関東地方の西部から中部地方にかけて、主として縄文・中期に、釣手土器と呼ばれる複雑な形の土器が作られた・この土器は例えば九十一戸もの竪穴住居址から、約四百もの修理復元できた様々な土器を出土している長野県諏訪郡富士見町の井戸尻遺跡でも、わずか四個しか発見されていないなど、同時期の他の土器に比べて数が極めて少ない。しかも完全かほとんどそれに近い状態で発見されることが多いので、当時の人々に何か特別に貴重な物と見なされて、他の土器よりずっと大切に取り扱われていたらしいことが窺える。」 「縄文の神話」 吉田敦彦
中期から後期そして晩期にわたって作られたこのタイプの土器。
数は、極めて少ないが、完形で出土することが多いこの土器は、花器、火をともしたもの、或いは何ものかをを薫ずる為のものと見られている。
そして、他の祭祀に用いたことが確実と考えられるもの、例えば、石棒や石柱、人間の顔の形の飾りが口縁部につけられ、全体が体内に食物を蔵する女神を表わすように見える顔面把手付土器、酒造具として用いられたと考えられる有孔鍔付土器等と併せて出土することから、縄文宗教で用いられた極めて重要な聖具の一つと考えられている。
然し、火をともすもの、灯明用とすれば、何を燃やしたのであろうか。
例えば、樹脂分の多い木、蜜蝋、獣脂、植物油、石油、アスファルト、???
少なくとも、エゴマの油は使われていた−−。
そして、香炉的な使い方をされたとしたら、何を?
例えば、香木、香草、大麻?
縄文の文化は、底知れぬところがある。
ごく素直に、その用途を考えるべきなのだろう。
勿論、一般生活用ではなく、祈念・祭祀・呪術に使われたものだ。
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