縄文・前期から中期、富士眉月弧地域に現れた独特の土器、有孔鍔付土器。 前にも紹介したように、酒造りの醸造器とか太鼓だとか想像されている。 長野・山梨派は、小穴が発酵ガスの逃げだとし、醸造器説を強硬に主張する。 *2 この小穴がないと発酵ガスが抜けないような密閉が出来たのか?そんな材料があったのか?と言う疑問。 さらに、ある形状のものはとても、密閉できない? 更に、若し、こういった構造の土器が醸造器として有用であれば、何故、後期以降に廃ってしまったのか。 太鼓だとする人、例えば、玉川大学教授戸田哲也氏は、小穴に紐を通して皮を固定したものだとする。*1 然し、大石遺跡出土のわずか、13.2cm高のものが太鼓として役立ったのであろうか。ボンゴ? 勿論醸造器としても、ちょっと小さすぎるが。 まあ、何れも、想像の域を出ない。が、祭祀の重要な道具として造られたものであることは確かだろう。 長野県、先ず、例の尖石縄文考古館の有名な彩色土器 長野県茅野市・長峰遺跡・40.2cmH これなぞ、どうやって密閉したのか? 四方に描かれた文様を、蹲る「動物」だとする。 密閉の仕方も難しい。 長野県原村・大石遺跡・13.2cmH・八ヶ岳美術館 有名な蛙の神。 長野県・藤内遺跡・51.5cmH・尖石縄文考古館 目と手だけになった「蛙神」 長野県・井戸尻遺跡・35.5cmH そして、目だけになった。 長野県佐久郡南牧村・野辺山 何だろうね? 長野県岡谷市・花上寺遺跡 いわずと知れた「蛇の神」 長野県・藤内遺跡・12.4cmH そして、山梨県。 山梨県・鋳物師屋遺跡54.8cmH勝坂式 山梨県境川村・一ノ沢西遺跡33.2cmH 山梨県・金山遺跡・11.5cmH 最後に、関東地方の逸品を。 典型的な「蛙神」 神奈川県平塚市岡崎字上ノ入(岡崎小学校校庭内)・上ノ入遺跡・44cmH これは、前期の品。 前期・千葉県船橋市・飯山満東(ハサマヒガシ)遺跡・諸磯式 富士眉月弧地域から外れた富山県で、ミニチュア土器に有孔鍔付土器が現れることから、 祭祀用の道具であったことだけは確か。 中期・富山県庄川町・松原遺跡・新保新崎様式・高さ右から、8、9.5、10.8,13、11.5cm *1 : 「縄文」光文社文庫 *2 : 「日本の古代 2」 列島の地域文化 中公文庫 森浩一編 「山麓と河川ぞいに拡がる信濃文化」 桐原健(松本市史編集委員) 『有孔鍔付土器は、醸造用土器であり、醸される酒を貯えておく土器であり、供献の土器でもあり、その酒に籠った霊を納める慿代としての土器でもある。原則として文様はなく。素地の上に具象だけが描かれている。 この土器の用途については、古くから太鼓説がある。太鼓も宗教的用具だから、具象的人物が描かれていてもおかしくはない。だが、口縁に皮を張った形跡はないし、それに、最近、諏訪市大ダッシュ遺跡の七号住居跡から出土した土器は、小品ではあるものの、明らかに皮袋を模したもので、醸造具であることは間違いなかろう(何故だ?????)。』
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