土偶との遭遇

ユーラシア大陸の旧石器時代・後期の女性小像
Female Figurines of the Upper Paleolithic

Russian Group ロシアグループとしてまとめられるもの  その2
Old Avdeevo,New Avdeevo

Avdeevoは、ロシアのKursk市の近く、SejmとRogozna川のにある旧石器時代の遺跡であり、Kostenkiの遺跡とも近い。

ここの住居は、西暦紀元前23,000年から20,000年前のもので、1941年に発見され、それ以来、何度か発掘調査が行われた。

Old Avdeevo−旧アヴデーボと呼ばれる遺跡は、1946年から1948年に、先ず、M.V.Voevodskijにより発掘され、その後、1949年に、A.N.Rogachevにより発掘された。Old Avdeevoは、主居室があり、その縁に沿って、少なくとも七つの半地下形の竪穴式住居が並んでいる。

今現在は、New Avdeevoと呼ばれている遺跡は、1970年代に発掘が始まり、現在まで続いている。
この遺跡の発掘は、1976年に、モスクワ州立大学の考古学博物館と科学調査協会のM.D.GvozdoverとInstitute of Archeologyのレニングラード支部のG.P.Grigorevの指揮下で始まった。New Avdeevoは、Old Avdeevoから、わずか、20m東のところにあり、ちょっと大きな住居である。同じような楕円形の居室の周りに、10個の半地下式の竪穴住居がくっついている。この様に、二つの居住区は極めて似た構造をしているが、これらは、先ず同時に存在したのかもわからず、又、一つの住居地であったかどうかもわからず、又、同じ一族のものであったかどうかも判らない。

これらの遺跡からは、実に多くの考古学的遺物が出土している。無数の小像が出土しているが、あまりに数が多いために、ごく一部のものしか名前がつけられておらず、又、説明もされていない。

これらの小像についての文献が少ないために、なんら解説文のない写真や絵しか公表されたものがない。





New Avdeevoから出土したものの中には、KostienkiやWillendorfから出土した小像の頭に似たものがある。

頭は、前に突き出した造作のない丸い顔を持ち、他の小像と似たくさび型の刻み目で飾られている。
肩は狭く、腰は平らで引き伸ばされている。そして、涙形の乳房は腹部にまで垂れ下がっている。
腰の上のほうの帯は、互い違いの楔形の刻み目で飾られている。
腕は、肩のところでは明確に表現されているが、肘より下は写実的に彫られている。前腕は非対称で、右の手は腹部を側面から抱え、左手は乳房に沿ってたらされている。
陰部の三角形は短く平らであるが突き出している。
両足の上部は溝で分けられているが、膝から下の肌は隙間で分けられ、更に又、つながっている。この小像のいちばん幅の広いところは、骨盤の上の部分であり、背面の平らになった部分から膨らんだ肉が側面に張り出ている。

研究者は、この小像を、細い胴と脚、豊満な乳房と妊娠した腹部を持つ成熟した、多分、妊娠した女性と見ている。


もう一つ、Avdeevo出土の小像を紹介する。

この小像は、New AvdeevoのAvd−N77,N1より出土したもので、先に紹介したものやその他二三の小像とともに、同じ溝の中から発見された。これらの小像は、近接した状態で埋まっていたので、所有者が意図的に一緒にしたものと推定された。
二三の地面から露出していたものと違い、この象牙の小像は、非常によく保存されていた。

この小像は、10cmの長さで、前を向いた顔をもたげ、前に紹介した小像と違って、髪の毛か帽子をかぶった形である。
肩は狭く、腰は平たく、涙形の乳房が、やや突き出た腹部の頂点のやや上にある。
前腕は、乳房の真下にあり、その下の手は腹部の上を押さえているように見える。
楔形の刻み目で装飾された帯は、前に紹介した小像と同じであるが、乳房の上部ではなくて、腰に彫刻されている。
脚部は、以前に紹介した小像と極めて良く似ているが、膝の部分で若干曲がり、膝から下は、穴が彫られて、脚が分かれている。つま先は一緒になり、踵は分かれている。
尾てい骨の付近は、平べったくなっていて、この部分に盛り上がった肉が付いていたほかの小像と違っている。

この小像の特異なところは、Avdeevo出土のみならず、Kostienki出土のものと違って、顔の造作が詳細に刻まれていることと複雑な頭の模様−髪の毛か帽子か−を持っていることである。
小さな鼻を浮き彫りで表し、眼窩は、半円で表され、口唇は彫られず、その代わりに、ほんのちょっと突き出た形で表されている。

年若い女性を表したのではないかと思われるこの小像の頭や体の表現は、この遺跡から発見されたその他の小像と非常に違ったものである。


* Venus of Gagarino

     

1926年から1929年に、Zimiatinine氏が貯蔵庫のための溝を掘らしている時に、偶然、一軒の家が発見されたが、残念ことに溝掘り作業で、この旧石器時代の家の暖炉だったと思われる部分と入り口が破損してしまった。

ここで発見されたものが、Avdeevo近傍地域から発見された物の中で、もう一つ有名な小像である、Venus of Gagarinoと呼ばれるものである。この小像は、5.8cmの高さで、その頭の模様やプロポーションが似ていることから、Venus of Willendorfとの関係があるのではないかと言われる。
肩は、非常に大きな乳房の上におかれた腕に先細りになっており、乳房は、円形の腹部の上に乗っかっている。頭部の顔には造作がなく、頭には、大まかな模様が彫られている。

このVenus of Gagarinoのほかに、この地域原産の石で彫られた何体かの小像が発掘された。




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