土偶との遭遇

ユーラシア大陸の旧石器時代・後期の女性小像
Female Figurines of the Upper Paleolithic


Rhine-Danube Group ライン−ダニューブグループとしてまとめられるもの  その1


このグループが出土したのは、現在のドイツ、オーストリア、そして、チェコ共和国に属している地帯である。
この地域からは多くの小像が発見されているが、中でも、「ビーナス小像」といわれるものがよく知られている。

多くの研究者は、この地域の小像が互いに関係があり、又、ロシアグループとしてくくられるものとも関係があると言っている。ロシアグループとの関係は、後で詳細する。
この地域から出土した小像のスタイルや年代は、研究者を悩ましてきた。というのも、色々な収集物が際立った類似性が認められ、それらの製作や流通が互いに密接な関係があったのではないかと思われたからである。


* Venus of Willendorf  ヴィレンドルフのヴィーナス

最も有名なものは、ヴィレンドルフのビーナスであろう。

これは、11cmの高さの石灰石の像で、緻密な髪の毛の表現と造作のない顔で知られ、Josef Szombathyにより、1908年にオーストリアのヴィレンドルフの町に近いダニューブ川から30m高いところにある段丘にあるオーリニャック文化の遺跡から発見された。

この小像の作られた年代については、いまなお、議論が行われている。
Baringは、西暦紀元前20000年から18000年の間だというが、24000年から22000年より古いと主張する人もおり、更にもっと新しいものだと主張する人までいる。

この小像は、かって、弁柄で塗装されていたことが明確となった。弁柄は、この時代の墓やその副葬品を象徴する一般的な物質である。

この小像は、極めて詳細で写実的な外陰部を持っている。又、細い腕は乳房の上におかれ、両足は膝の下で把手(ノブ)のような形で終わっており、又、顔の造作はない。

頭の特徴は極めて面白いもので、ロシヤの「ビーナス」に似たものがある。このヴィレンドルフのビーナスとロシアグループのあるものは、大体において、頭に同心円状の模様を持ち、この模様は、一般に、帽子または、何か象徴的な被り物もしくは、ある種の髪形を示しているなどの見方に分かれている。

 

Marshackは、このビーナスが、他のビーナスと呼ばれる小像を理解するうえで、中央に位置するものと表現した。彼は、このビーナスが、地理的に、年代的に、そして様式的にも、他に東や西で発見されたビーナスの中央に位置すると見たわけである。多くの研究者は、この見方に反対しているが、それでも、このヴィレンドルフのビーナスは、すべての女性小像の中で代表的なものであることにはかわりがない。


* The Dancing Venus of the Galgenberg  ガルゲンベルグの踊るビーナス

オーストリアで出土した中で、もう一つの著名な小像がある。
この小像は、発見者によって、「Fanny, the Dancing Venus of Galgenberg ファニー、ガルゲンベルグの踊るビーナス」と名付けられた。

この小像は、最も年代の古いもので、西暦紀元前30000年のものと思われるが、このあだ名は、19世紀のオーストリアのバレリーナ、Fanny Elsserにちなんでつけられた。

1988年9月23日にKremsの町に近い場所の発掘調査中に発見されたものだが、グラヴェット文化Gravettian期に一般に作られたものとは非常に異なる特徴を持っている。この小像は、少なくとも、五つの部分に分かれて出土し、復元後の高さは、7.2cmであった。

最初、この小像は、三本の腕を持つように見え、何か、人間的でないものようにも思えたが、単に、短かい差し上げられた腕と左の乳房を表したものと見直された。
顔の造作はないが、わずかに開いた膣と乳房をもっている。

材料が非常に輝く角閃岩の板であり、これは、極めてもろく割れやすい石であるので、この像の製作者は、胴と右腕の間や両足の間の空間や差し上げた左腕を作り出す、卓越した繊細な技術をもっていたことになる。

二本の腕の製作には、おのおの違った技法がとられている。即ち、右腕と両足の構造は、両端で支持されているのに対して、左腕は、折り畳んだ状態を表現したかのように解剖学的な長さの半分の長さにまで短くされている。

この小像は、旧石器時代のもっと後の時代にならないと開発されないと考えられていた進歩した彫刻技術を表している。

           





* The Venus of Dolni Vestonice ドルニ・ベストーニスのビーナス

大半の小像が、軟らかい石や象牙ので作られていたので、Dolni Vestoniceのビーナス、別名、黒いビーナスが、1925年7月13日に、現在のチェコ共和国のDolni Vestoniceで発掘されたときには、センセーションを巻き起こした。

Karel Absolon率いる考古学者チームが、マンモス狩猟者の古代の住居跡からこのグラヴェット文化期の小像を発掘したのだが、この小像は、粘土と骨を混ぜたものを成形し、焼成されたもので、この遺跡が西暦紀元前29,000年から25,000年のものであることがわかったので、焼成土器の最初の例だと言うことになった。

その頭は、粘土がまだ軟らかいときに付けられたと思われる、目をあらわした二つの細長い切り込みと一本の鼻を示した筋、頭の上の四つの小さな穴以外は、造作がない。

四つの穴は、花や葉をさしたものか、頭髪の代わりになる羽を挿したものと思われる。

この小さな黒色の小像(胴体のみの長さが11.5cm)は、長い垂れ下がった乳房を持ち、そして腕は肘までの長さしかなく、又、妊婦でもない。

帯を図式的に表したと思える深い溝で、胴体と脚部が分れており、背中には二本の溝が背骨の両側に彫られている。
興味深いのは、この小像には、陰部が彫られていないことで、単に深い溝で両足を表している。

ある研究者は、この小像が高度に抽象化されており、霊的な顔を持つことから、非人間的な女性=精霊であるとか、もっと具体的に、転生を約束する死をつかさどる神話上の女の精霊であるとかいっている。


        

Venus of Dolni V?stonice, Moravia, Czech Republic, baked clay, 27 000 years, Loan: Anthroposmuseum in Brno

The Venus of Dolni Vestonice (Czech: Vestonicka Venue) is a Venus figurine, a ceramic statuette of a nude female figure dated to 29,000?25,000 BCE (Gravettian industry), which was found at a Paleolithic site in the Moravian basin south of Brno.

This figurine, together with a few others from nearby locations, is the oldest known ceramic in the world, predating the use of fired clay to make pottery. It has a height of 111 millimetres (4.4 in), and a width of 43 millimetres (1.7 in) at its widest point and is made of a clay body fired at a relatively low temperature.

The palaeolithic settlement of Dolni Vestonice in Moravia, a part of Czechoslovakia at the time organized excavation began, now located in the Czech Republic, has been under systematic archaeological research since 1924, initiated by Karel Absolon. In addition to the Venus figurine, figures of animals ? bear, lion, mammoth, horse, fox, rhino and owl ? and more than 2,000 balls of burnt clay have been found at Dolni Vestonice.

The figurine was discovered on 13 July 1925 in a layer of ash, broken into two pieces. Once on display at the Moravian Museum in Brno, it is now protected and only rarely accessible to the public. It was exhibited in the National Museum in Prague from 11 October 2006 till 2 September 2007 as a part of the exhibition Lovci mamut? (The Mammoth Hunters). It was presented in the Moravian Museum in Brno at an expo "Prehistoric Art in Central Europe". It has returned back to depository as of June 2009. Scientists periodically examine the statuette. A tomograph scan in 2004 found a fingerprint of a child estimated at between 7 and 15 years of age, fired into the surface; the child who handled the figurine before it was fired is considered by Kralik, Novotny and Oliva (2002) to be an unlikely candidate for its maker.


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