土偶との遭遇

ユーラシア大陸の旧石器時代・後期の女性小像
Female Figurines of the Upper Paleolithic
その三

Mediterranean Group 地中海グループとしてまとめられるもの  その2



* woman with goiter 甲状腺腫の女、他二体   Barma Grande Grimaldi洞窟出土

Barma Grande Grimaldi洞窟から、Louis Jullienは、少なくとも、3体の女性小像を見つけたといわれている。

先ず、雄鹿の枝角で作られた、高度に様式化された一体(a)で、「甲状線腫の女」と名づけられたものである。

有名な、yellow steatite figurine-黄色のステアタイトの小像(b)も、その中の一体である。

もう一体は、「woman with pierced neck-首に穴が開いた女」(c)と言われるもので、これは粗彫りであるが、頭部の両側に、異常な顔を持っている。
この名前は、Jullienによってつけられたもので、Eouard Pietteに1903年に出した手紙の中に見られる。ヤヌスは、ギリシャ神話に出てくる、二つの頭を持つ夢の神である。

* flattened figure、扁平な小像  Grimaldi洞窟出土

Louis Jullienが、Grimaldi洞窟で発掘した、7体のの内の一つ、単に、「flattened figure 扁平な小像」という名前のみで知られるものがある。

この小像は、大体の形が楕円形のペンダントで、暗黒色のいくらか透明な緑泥石で作られている。

この像の円形の顔には、目鼻などが刻まれていないが、唯一、左右に浅い彫り込みがあって、耳を示しているようである。又、頭の線は髪形ではないかと思われている。

この小像は、女性ではないかと考えられるが、性別を示すものはない。ということで、BissonとBolducは、幼年者を彫ったものではないかとしている。



* brown ivory figurine 褐色の象牙の小像、  Abrachiafe

この小像は、一部化石化した象牙で作られ、高さは6.76cmである。
Jullienによって、赤もしくは黄色がかった赤と表現された「ニス塗り」がされていて、顔料に良く使われる黄土が塗られたばかりのように見える。大きな半球状の乳房は、その間の深い溝で分れていおり、その乳房よりもさらに大きな半球状の腹部が突き出ている。

BissonとBolducは、更に加えて、この小像の陰部が、「非常に異常である」と記している。
というのも。深いU型の8.5cm幅の隆線溝が大腿部の中間から股の間にまで伸びており、このU字溝の中央で、腹部の基部に、小さな注意深く彫られたさかさまになった三日月の彫りこみがあるが、これは、小陰唇を示したものである、としている。

この小像は、象牙が使われているが、この時期には、マンモスはイタリアにおらず、こうした象牙はほとんど見つかっていないと言う問題を提起する。
研究者は、この小像は、イタリヤから遠く離れたところで作られたか、または、材料がイアタリアに運ばれたかのいずれかであろうと言っている。
いずれにしても、象牙の類は、イタリアのLiguraやフランスの南東地域では、極めてまれなものであった。




* ivory figurine with red ochre, Dame ocree 黄土色の小像

ivory figurine with red ochre 黄土色の小像は、高さが7.52cmの女性の像で、象牙か骨で出来ている。

楕円形の顔は、のっぺらぼうで表情が刻まれていない。

頭と胴体は、元々は、厚い黄土の層で覆われていたと思われる。整えられた髪が顔を縁取り、二つ別れた先端は、肩の後ろにかかっている。BissonとBolducは、それをお下げ髪だとした。

上腕は、小像の両側にしっかりと彫りこまれているものの、前腕又は手は無い。

乳房は楕円形で、横から見ると円筒形であるが、丸くて突き出した腹部にまでは達していない。

拡大された下腹部が、両の太股の間まで達しているものの、外陰部は表されていない。

単純化された先細りの足を持っているが、膝から先が失われているので、足首から先を持った完全な脚を持っていたかどうかはわからない。




* smallst complete figurine in the Grimaldi collection, female with two head  双頭の女

Grimaldiから出土した小像の中で、完全な形を持つ最も小さいものは、わずか、2.75cmの薄い緑がかった黄色の蛇紋石で出来たペンダント形のものである。

この「双頭の女」と呼ばれる小像は、掘り出したときに腰の部分で壊れていたが、修復された。

赤い黄土の痕跡が、よく磨かれた表面に刻まれた條痕のなかに残っている。

前を向いた頭は、卵形で、その造作は刻まれていない。額には、深い條痕がある。また、細い垂直な條痕があり、これは濃い頭髪を表したものと思われている。

円形の橋上のものでつながっているもう一つの側には、同じような卵形の頭があり、顔は、反対側を向いている。この頭は、もう一つの頭に比べて少しだけ大きく、第一の頭と同じ角度でうつむいているように見える。

両方の頭の間には、楕円形の吊り下げ用の穴が開いていて、ここには、蝋状の繊維のかすのようなものが残っているが、これは、発見者のJullienが、過って、そうしたものをつけて吊り下げたときに付いた痕ではないかと考えられている。

この小像の体は細い胴体、腕がなく、突き出た乳房と腹部、膝の部分で終わっている先細りの足からなっている。
乳房は、巨大で前の方に突き出している。右の乳房に比べ、左の乳房は二重の状痕が周りを囲み、乳首の場所に小さな穴があいている。
背中には、背骨を示したものと思われるかすかな溝がある平らな背中と細い胴、そして、広い腰を持つ。腹部の中央はほとんど完全な円形に突き出してその中央には小さなへそがある。
大きくて丸い二つの尻の頂上には、皺があり、丁度肛門の位置に小さなくぼみがある。
極めて大きい下腹部には縦の溝によって示された陰門がある




*実物を手にとって観察しないと確としたことは云えないが、「双頭の頭を持つ」という見方には、いささかならず疑問がある。ペンダントとして紐を通す穴を開けたことにより、あたかも、頭が二つあるような形状になったのではないか、とも思われる。後ろ側の頭と言っているところは、大きな髷ではないか。


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