土偶との遭遇

ユーラシア大陸の旧石器時代・後期の女性小像
Female Figurines of the Upper Paleolithic
その二

Mediterranean Group 地中海グループとしてまとめられるもの


Mediterranean Group 地中海グループとは

欧州の初期の発掘者や骨董漁りは、対象とするこの地域では、グラヴェット文化Gravettianの遺物は探し当てられなかった。

そこで、一般に、イタリアは、グラヴェット文化Gravettian期やマグダレネアン文化期を通り越してしまい、オーリニャック文化期や旧石器時代の地層しかないと考えられていた(Osborn 1919:434)。

しばらくして、ある大規模開発が行われた時に、そこで偶然にも、大量の遺物が発掘され、この地域が、欧州大陸でも有数の遺跡であることが判明した。

このときの遺物の発見は、日常の工事の途中で、従って、考古学的発掘の手法から見れば、極めて、手荒い作業であったので、当然、「発掘記録や考古学的な遺物の記録」はほとんど残っていなかった。
そして、しばらくは、この地域のほとんどの発掘は、考古学的な知見の乏しい、金と名声にしか興味のない金持ちによって行われてしまった。



*Venus of Savignano

sssssssssss ssssssssssssss

イタリヤの北東、Savignanoの遺跡−Po Vallyの際のモデナにほど近い−、から、旧石器時代後期の唯一つの工芸品であるVenus of Savignanoなる小像が発見された。

この小像の高さは、22.1cmであり、軟らかい石、ステアタイトで作られている。

1925年に偶然発見されたこの小像は、大きな垂れ下がった乳房と丸い腹部、大きな飛び出た臀部を持ち、明らかに女性と思われる。
この像は、丸く長い円錐形の頭と同じような円錐形の脚部をもつ。

これらの特徴から、もし長手方向に二つに分ければ、二個の男性性器にも見える。
この小像は、この独特の特徴から、興味深いものであるが、同時に解釈に苦しむものである。
なぜなら、この小像の作者が、男女両性を表そうとしたとも考えられるからである。

Margherita Mussiは、この小像は、「洗練された、然し、いまや滅んでしまったコスモゴニー=宇宙進化発展論によるもので、男女両性の本質を、高度に一体化したものである」と結論している。


*訳者の個人的な見解では、この様に、物事をより複雑に、より精神的なものと解釈しようとする方向性は、危険である、むしろ、この形は、具体的な様相を写したものと考えた方が素直であろう。不思議に思われている円錐形の頭部などは、例えば、とんがり帽子的なものをかぶった姿?とでも何とでも、解釈できよう。どうであろうか?


* Grimaldi or Balzi Rossi site in Ligura, Italy

イタリアのLiguraにある、Grimaldi もしくは、Blzai Rossi は、フランスとの国境近くの地中海沿岸の断崖に出来た一連の洞窟(幾つかの洞穴を含む)がある。この場所は、地中海グループ中でも有数の豊富なグラヴェット文化Gravettianの遺跡が見つかっている。

1883年から1895年の間に、Louis Alexander Jullienなるアマチュア先史研究家が、15体の小像を発見した。
西欧において、又、勿論、Grimaldiにおいても、一箇所で、これほど、まとまって、多くの小像が発見されたことはない。

彼は、間欠的に発掘作業を行い、こうした、女性の小像以外にも、かなりの数の後期旧石器時代の遺物を発見した。ほとんどの遺物は、私物として彼により保管された。
1896年から1914年にかけて、彼は、Henri Greuilのような他の収集家や美術館に、ぼつぼつとこういった遺物を売っていた。
第一次世界大戦中に彼は家族とともにカナダに移住した時に、残りの遺物を持っていった。
そして、1940年代に、彼の娘が、Harvard's Peabody Museumに、小像を売るまで、これらの遺物が世に現れることはなかった。
そして、第二次大戦が始まるとこの遺物の存在は、又、忘れられてしまった。

1987年に、彼の孫娘が、モントリオールの古物商に、様々な石器と5体の小像を売る決心をした。

モントリオールの彫刻家のPierre Bolducがこの遺物を購入し、そして、まだ、二つの小像をJullienの家族が所有していることを確かめることが出来た。
このJullienは発掘した収集物は、1994年にようやく、集められて、目録が作られた。
このコレクションの小像は、すべて、本当に素晴らしいものであるが、ここでは、その中の10体について言及しようと思う。


* The Bust

「Bust−胸像」として知られている彫刻は、緑泥石という薄黒い柔らかな石で作られており、頭と上半身のみ出土した。

寸法がわずか2.92cmで、Grote du Princeか、もしくはBarma Grandeの出土か不明である。

頭は、円球状で、目と鼻があり、唇は、石の色違いでわかる程度で、唇のあると思われるところの水平な切り込みを唇とは認めがたい。
右の胸の部分は欠けているが、残っている胸の部分は卵形であり、乳房の間のの間のV字型の切り込みで、乳房が垂れ下がり、乳首が下を向いていることがわかる。



* double figurine : La Belle et la Bete : the Beauty and the Beast

この地域から出た、まさに、不思議というべき小像は、4.72cm高さの"double figurine"であろう。

この小像は、小さなペンダントで、女性と背中合わせに動物が刻まれている。

薄黄緑色の蛇紋石で出来ていて、頭と肩、そして脚の部分がくっついている。

女性の部分は、頭を上げて、身を反らして、胸と腹を突き出している。顔は、その中央部分が、のみで削り落とされていることから、意図的に表情を刻まなかったものと考えられる。

女性像は、又、円筒形の垂れ下がった胸乳を持ち、腹部は腰より広く、突き出している。

陰部は詳細に彫刻され、大陰唇は垂直な刻み目で表されている。ある方向から見ると、膝はしっかりと締められているが、両足を分けている彫り込み膝の下までには達していない。

動物を表していると思われる像のほうは、頭こそ見事に表現されているものの、体は、省略されているので、動物の種類が特定できない。
もし、頭と体が一つの生物のものだとすれば、頭は、肩の上で、完全に回っており、不可能と思われる状態でになっている。
BissonとBolducによれば、顔の造作は、爬虫類のものではないが、と言っても、全く、判別が付かない。強いて言えば、何か小さな肉食動物、例えば、イヌ科の狐とか狼とか、又は、イタチ科のテンか、グズリではないかと思われる。



*Venus of Monpazir, Polichinelle, Punchiello 道化師のパンチネロ


Punchielloは、Venus of Savignanoに良く似た小像で、緑色のステアタイトで、丁寧に彫られて磨きがかけられている。

パンチネロの渾名は、イアタリアの人形劇に出てくる道化の名前で、この像の目立つ臀部と突き出た腹部が似ていることからつけられた。この小像は、又、発見された場所のにちなんで、Venus of Monpazirともいわれるが、他の小像にも同じ名前をもっているものがあるので注意しなければならない。

Monpazierは元々は、フランス領とされたが、発見した1970年には、フランスからイタリアに所属が変わっているので、この小像をこのグループに含めた。




Definition of MAGDALENIAN: of or relating to an Upper Paleolithic culture characterized by flint, bone, and ivory implements, carving, and paintings  French magdalenien, from La Madeleine, rock shelter in southwest France

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